いつもお世話になっております。
本日は直近話題となっているSPAC(Special Purpose Acquisition Company)についての考察をいたします。
が、その前にある企業の話をいたします。
Nikola(ニコラ)という会社をご存知でしょうか。
EVトラックなどのメーカーとして2014年に設立された新興企業です。
ちなみに社名のニコラは、ニコラ・テスラという、エジソンと並び天才と評された発明家から取ったようです。
ニコラはSPACによる買収(後述します)により、2020年3月にNasdaqに上場。
ここで驚くべき点は、まだ1台も販売していないにもかかわらず時価総額が一時2兆円を超えたこと。
この数字は、年間約493万台を販売した日産自動車よりも大きな時価総額となります。
この新興企業に資金が集まった要因としては、主に下記が挙げられます。
l ブルーオーシャンであるFCEV(燃料電池自動車)に着目した点
l 車両のみならず水素ステーションなどを含むパッケージで提供するビジネスモデル
l 既に大型の受注を受けている点
しかし今年9月、ヒンデンブルグ・リサーチ社によるニコラに対する疑惑をまとめたレポートが発表されました。
内容は主に下記のとおりです。
l 過去に発表された燃料電池トラック「ニコラワン」は実際は走っておらず坂道を下っていただけ
l 内製されているはずの部品は本当は外注だった
l 社内に水素技術に関する専門家が本当はいない
ニコラ側は上記の疑惑に反論したものの、結果9月中頃にはトレバー・ミルトン会長は辞任、株価は暴落となりました。
(出典:Yahoo! Finance)
前置きが長くなりましたが、本日のテーマに移ります。
ニコラ社はSPACにより上場しました。
SPAC(Special Purpose Acquisition Company) とは特別買収目的会社のことです。
彼は何のビジネスも持たず「空箱」のまま上場、一方投資家はSPACの運営者の過去の実績等に期待して出資します。
運営者は彼らの目利きで企業を買収、買収先が存続企業となって上場会社となります。
その企業が順調に業績を上げるなどすれば投資家は利益を得ます。
期限内(約2年)で買収先を見つけることができなければ、資金を投資家に返すといったスキームです。
今年はSPACによる株式市場上場金額が急拡大しており、7-9月の新規株式公開(IPO)の半分がSPACによるものとなるなど、その存在感が急拡大しています。
米株公開、5割が「空箱」 緩和マネーで過熱 既存株の直接上場も
投資家サイドは細かい事業内容等を気にすること無くSPAC運営者を信じて投資をすることができますし、
証券取引所側からすれば新規上場の活性化としての意味を持ち、SPACによる調達額は特に今年は増加していることがわかります。
(出典:日本経済新聞HPより)
ニコラ社についてはまだ白黒ついたわけではありませんが、
SPAC側の目利きが問われる案件として、いま米国で大きな話題となっています。
しかしながら様々なメリットを考慮すると、今後もSPAC上場は増加の傾向にあるかと考えます。
そしてこの環境を維持しているのは世界的な金融緩和マネーと言えます。
世の中の運用待機資金の行き場がなく、選択肢の一つとしてSPACにこれだけの資金が流れていることは驚きです。
日米欧の金融政策が当面の間緩和姿勢にあることや、「空箱」への資金流入が継続している金融市場の環境を鑑みると、
SPACを含む株式市場の下支え余力や上昇圧力に期待できる環境が継続していると言えるのではないでしょうか。
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