本日あるお客様が日本の銀行から香港宛に送金手続きをされましたが、送金手続きは失敗し、手数料が差し引かれて組み戻しとなりました。過去にも様々な理由で送金が滞ったり、送金自体が否認されるケースがいくつかありました。該当のお客様にはご迷惑をおかけしました。
この海外送金、昨今非常に難易度が上がっています。財務省は定期的に外為法を改正し、海外送金に対する規制を年々強化しています。各金融機関はこの規制をもとに独自のガイドラインを作成・更新し、業務にあたっています。
https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/gaitame_kawase/gaitame/recent_revised/index.html
理由があるたびに規制を強化し続けた結果、現場(銀行窓口)は海外送金業務自体にアレルギー反応が出ているように私は感じます。
例えば香港で購入したい商品がある場合、送金目的「Investment」で送金を依頼しても、銀行側はすぐには送金を受け付けてくれません。
送金理由が不十分だとか、具体的にどのような商品に投資をするだとか、どこの国に送金するのかだとか、その先に危険国への送金をするのではないかとか、、、
最終的に送金を受け付けず、その理由は「総合的な判断から送金できない」と回答され、否認理由すらわからないこともありました。銀行は海外送金の際に責任者の承認が必要となりますが、彼らは簡単に承認しないでしょう、判を捺さなければ責任が発生しないのだから。と、勝手に思っています。
九州にお住いのお客様が、メインバンクの地銀で海外送金を依頼したところ全く受け付けてくれず、都市銀行に行ってようやく送金が完了したということもありました。銀行次第かもしれませんが、自分のお金を自分の意志で動かせない時代が来てしまったのかもしれません。
ちなみに香港から日本への送金はメールでご依頼いただければ通常、1-2日で着金します。日本から海外にお金を出すことの方が困難です。
財務省のHPには、この規制強化の概要と変遷が記載されています。
https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/gaitame_kawase/gaitame/hensen.html
規制を強化する理由の裏に、下記理由も存在するのではないかと推察しています。表向きはテロ資金対策強化が中心ですが。
- 日本国内での資金循環
- 海外への資金流出阻止
日本にある金融商品は、基本的には日本の金融庁の認可を受けたもののみ取り扱いがあります。でも、海外には同等のリスクでより利回りの良い商品が存在します。例えば保険商品。
香港に来た日本人駐在員は、日本帰任までに香港で保険を契約することが非常に多いです。なぜなら香港の保険は日本の保険より率が良いから。そして、日本に帰任した後(日本居住者になった後)は、基本的に海外の保険の購入ができません。保険業法186条にその旨が定められており、もし海外の保険を購入したいのであれば、内閣総理大臣の許可を取るように書いています。要するに、買うなと。
もし金融庁が規制を緩和し海外の保険の購入を許可したら、日本の保険会社は一気に衰退する可能性があります。国内の保険会社を守ることにもつながっているのだと思います。言い換えれば、現状日本人は外国と比べて率の悪い選択肢から保険を選んで購入しているということになります。
資産運用の世界も似た点があると思います。日本人は基本的に、日本の金融庁の認可を受けた金融商品の中から購入しないといけません。でも海外にはもっと質の高い金融商品が存在する。ここに対するアクセスを制限することも、業界保全につながります。海外送金に対する規制強化が業界から歓迎されるわけです。
今は海外金融機関の口座開設すら難しくなってきたご時世になっています。海外口座を有効活用していただきたいと思っています。規制がさらに強化される前に。
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