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いつもお世話になっております。

現在中国で開催されている全人代にて議論されている国家安全法(本日採決の見通し)については日本国内でも大きく取り上げられていると聞きました。

香港を巡って米中の緊張が高まってきていますが、金融センターとしての香港という観点から考えてみたいと思います。

中国側は今回の国家安全法が香港の高度な自治を侵害しないと主張していますが、

ポンペオ米国務長官は米国議会に対し、米国・香港基本法に基づいて香港に認めている優遇関税措置を認められないと報告しています。

関税やビザに関する優遇措置を見直す可能性について言及しているものの、金融センターとしての立ち位置を崩す方向には話は進んでいません。

米国にとっても香港の存在は経済的なメリットが大きいために、金融市場の規制等には触れてこないと思っています。

中国にとってもオフショア金融センターとしての香港を失うことが出来ない理由がいくつかあります。

  1. IPOマーケットとしての機能
    このような国際情勢になる前からベンチャーキャピタリスト達は中国のテクノロジーカンパニーに対して
    米国ナスダックへの上場を検討しないように伝えているようです。
    NetEaseやctripといった企業は、Alibabaに追随して香港での上場を計画しているとのこと。
    TicTokの所有者であるByteDance(時価総額1000億ドル)は、現在の状況でNYへの上場は考えられず、
    その結果、香港でのIPOに踏み切る可能性があります。
  2. 北京政府にとっての魅力
    香港という曖昧な立ち位置を利用し、資金の逃避先・受取場所としての価値が高いと言及している研究者がいます。
  3. 代替取引所の不在
    中国は1年前に上海にStar Boardを立ち上げ、バイオテック企業を取り込もうと試み
    更には上海とロンドンの取引所をリンクするスキームを開始しましたが、
    結果は上海が香港に取って代わる資本調達センターには成り得ないと知らしめることになりました。
    中国にとって米国という選択肢が取れなくなりつつ今、米中の緊張状態が続くことがむしろ香港市場の必要性を増すことに繋がると考えられます。

その他、香港の証券取引所(HKEx)と主要取引所についての簡易比較をしてみます。

オフショア投資でよく比較対象となるシンガポールは、実は市場規模としてはまだまだ小さく、

すぐに取って代わることにはならないと考えます。

(出典:野村資本市場研究所HPより)

以上の理由から、金融センターとしての香港の立ち位置は簡単には揺るがないと考えますが

ひとまずは今回の全人代の採決を受けての米中の反応を見る必要があります。

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