中国の香港に対する国家安全法に関して、香港に対する報道も増えていると聞いています。
そんな中、香港ドルの価値や流動性に関してのご不安をお持ちの方もいらっしゃると思いますが、
むしろ、香港ドルが上昇する可能性があるとのデータがあります。
まず、香港ドルはそもそも米ドルにペッグしている通貨です。
1USDは7.75~7.85HKDの間で管理されています。
米国からペッグ外されたらどうするんだというご意見があるかと思いますが、
実は米ドルにペッグすることについて、米国の許可は不要です。
(出典:Bloomberg)
外貨準備高についてです。
香港は日本の国家予算の半分弱(約47兆円)もの外貨準備を持っています。
香港はGDP(約38兆円)の100%以上の外貨準備高を維持するよう、法律で定められています。
https://www.bis.org/publ/bppdf/bispap104a_rh.pdf(英文)
(出典:Bank of International SettlementのHPより)
外貨準備高という観点でも、他国と比較して圧倒的に通過防衛力が高い状況となっています。
さらに、直近の香港銀行間での香港ドル流通量の増加にも着目する必要があります。
4月22日から24日で540億HKDから680億HKDに増加、29日には850億HKD、現在は950億HKDとなっています。
直近で銀行間流通量が2倍近くに増えています。
これは香港ドルの為替レートの安定に繋がり、更には下支え要因となります。
ここからは、HKDの上昇可能性を示唆する内容を記載いたします。
下記はUSDとHKDの短期金利の直近値(2020年6月4日現在)です。
l US$ LIBOR (1M) 0.17875%
l HK$ LIBOR (1M) 0.83423%
l US$ LIBOR (3M) 0.33050%
l HK$ LIBOR (3M) 1.06036%
キャリートレードが行われるとすれば、金利の安いUSD売り&金利の高いHKD買いとなり
HKD上昇要因となります。
次に、米国の国策的な中国企業の締め出しについてです。
米国は先月、“Holding Foreign Companies Accountable Act,”(外国企業説明責任法)を上院で可決しました。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59365720R20C20A5I00000/
この法案により、米国の上場企業は外国政府が所有していないことを証明する必要があります。
名指しはしていないものの、中国に対する米国市場からの締め出し法案と言えます。
アメリカの取引所には、中国関連の上場企業が156社あり、時価総額は1.2兆USDに上ります。(2019年2月現在)
https://www.uscc.gov/sites/default/files/Chinese%20Companies%20on%20U.S.%20Stock%20Exchanges.pdf(英文)
上記の中で法案の対象となりうる企業が少なくとも700億USD存在します。
その企業の移動先として香港市場が選ばれる可能性が高いと考えます。
本日の日経新聞にも、関連記事が掲載されています。
記事にあるNet Easeは前述の156社のリストの中の9番目に大きな企業です。
(出典:日本経済新聞2020年6月4日10面)
上記の理由から、米中の緊張関係が継続すればするほど中国企業の回帰が期待でき
HKDの上昇要因と、香港市場の地位向上につながってくると言えます。
さらにはコロナウイルスの影響もあり、米中の相関関係がより低くなっていることから
これまで以上の分散投資効果が高いポートフォリオを組むことができると考えます。
米中の投資家にとってはお互いの成長セクターへの投資に制限がある一方、日本を含む第三者目線の地域の投資家にとっては
最適なポートフォリオ形成が可能となる、絶好の好機ではないでしょうか。
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